バラック・オバマ 大統領就任

バラック・オバマ 1961年8月4日 19:24 生まれ アメリカ合衆国ハワイ州ホノルル
バラック・オバマ氏ホロスコープ
1.大統領選挙勝利のとき
●ヴィムショタリダシャー
2008/11/04はJu/Mo/Meだった。マハーダシャーの木星は減衰してはいるもののニーチャバンガしています。1室在住で方角の強さも獲得しています。アセンダントと木星からダブルラグナでアンタルダシャーの月は自己実現の5室に7室支配星でムーラトリコーナで強い状態で在住しています。良質なラージャヨーガが形成されています。そしてプラティアンタルダシャーの水星は9室支配星でケーンドラの7室に在住しています。7室はデビューのハウスでもあります。月ラグナからも水星は2,5室支配で4室支配の太陽とコンジャンクションし、マハーダシャー支配星の木星(8,11室支配)、強力なラージャヨーガが構成されています。ラーシのみで考えても大統領選挙に勝つのには申し分の無い配置でしょう。
更にナヴァムシャでは水星はアンタルダシャーの月から6室で高揚し、競争に勝つことを示しています。そして、太陽から10室に在住で高揚し、1室と4室支配の木星と相互アスペクトし、これもまた強力なラージャヨーガを構成しいます。
仕事を表す分割図のダシャムシャーでは水星はアンタルダシャーの月から6室支配星で3室定座に在住し勝負運の強さを表しています。また太陽から見てもナヴァムシャと1,10室支配星で10室で定座に在住し、社会的名声を得ることを表しています。
●ヨーギニダシャー
ヨーギニダシャーではラーフ/水星/土星期でした。ラーシでは水星は9室を支配し、デビューの7室に在住します。1室支配星の土星とも相互アスペクトし、ここでもラージャヨーガを形成しています。
ナヴァムシャでは水星は太陽から10室定座で強い状態にあります。ラーフからは5室定座で強く、自己実現できることを示しています。また土星は水星からまた5室定座に在住し、6室支配星で勝負運の強さを物語っています。ラーフからそれぞれ水星5室、土星9室にあり、しかも定座でトリコーナにあることからとても幸運な次期であることを示しています。
ダシャムシャでは水星は太陽とラーフのダブルラグナで定座の10室に在住し、ここでも強く名声を得ることを示唆しています。土星は太陽から5室、6室を支配し1室の有効星座に在住し、ラージャヨーガを形成しすると同時に6室が強く勝負運の強さを示しています。
●チャラダシャー
チャラダシャーでは水瓶座/蠍座基で蠍座から9室にAmKの太陽が在住し、成功の次期であることを示しています。
以上の詳細な検証から彼が大統領選挙に勝つことは必然的なことだったのでしょう。
2.大統領就任式のとき
バラック・オバマ 大統領就任トランジット
日本時間の2009年1月21日12:00、全世界が注目するアメリカ大統領の就任式であった。そこでその日のトランジットを検証してみた。すると就任式に相応しい特徴が読みとることができた。
まず、アセンダントから検証すると第1室を幸運の木星が出生の木星をトランジット、仕事や威厳、リーダーシップを意味する太陽も1室をトランジット。しかも、出生の木星と1度以内のタイトなトランジット。ラーフもトランジットし、アセンダント・月・太陽にアスペクトし、彼にとって大変な時期であることも読み取れる。また、太陽をラグナとしたときにはデビューの第7室を木星・太陽・水星がトランジット。月からみると幸運の第9室をトランジットし、極めて運気の高い時期である。
また、短期的なことを表す月はアセンダントから高い地位・名声・評価・願望成就の第11ハウスを通過。月ラグナからはデビューと名声の7ハウス、太陽からは自己実現の第5室。しかも、総合アシュタカヴァルガのビンドゥは38と非常に高く、最高の状態にある。
ヴィムショタリダシャーは木星/月/金星、アンタルダシャーの月はアセンダントとマハーダシャーラグナから第7室(デビューと名声)支配星。それが第5室(自己実現)でムーラトリコーナの強い状態にあり、幸運の木星からアスペクトを受けている。プラティアンタルダシャーの金星はアセンダントとマハーダシャーラグナから5室と10室を支配するラージャヨーガカラカ。それが契約の6室に在住し、大統領への就任を示している。
トランジットでもヴィムショタリダシャーでも、地位・名声を得る最高の配置で、インド占星術の観点からも大統領就任を示していることがよくわかる。
3.性質や特徴
アセンダントが山羊座でそこに土星が定座で在住することから、野心家で思慮深く、責任感があり現実的に粘り強い人であることを表している。

就任演説
今われわれに求められているのは、新たな責任の時代だ。すなわち、米国民一人一人が、自分自身やわれわれの国家、世界に対して責務を負っていることを認識することだ。自分のすべてを困難な課題に注ぎ込むことほど充足感が得られ、われわれを特徴づけるものはないとの信念を持ち、いやいや受け入れるのでなく、むしろ喜んで受け入れる責務なのである。

就任演説で「責任の時代」と述べている。この言葉は地の星座の山羊座への土星の自室在住と同じく地の星座の牡牛座への月のムーラトリコーナで強い状態での在住が象徴的に示している。どちらも責任感がとても強い星座であり、それが非常に強調されている。
土星と木星がコンジャンクションしていることから発展的思考を持ちながら、土星の現実的にものごとを考え、目標を現実化する力を持っている。それ故に大統領にまなることができたのだろう。 就任演説は全体的に高い理想を掲げ、とてもメッセージ性に富み、聴衆を魅了させた。これは第10室の海王星に象徴される。海王星は夢想家、ユートピア思想、幻想を意味し、人を魅了する魔術的な力を持っている。また他者との境界が曖昧になるところは「我々」という言葉を多用するところによく現れている。
彼の大衆からの高い人気は月の強さにある。第7室を支配し、第5室に牡牛座でムーラトリコーナに在住し、ラージャ・ヨーガを構成している。そこに最大吉星の木星がアスペクトを組み、とても強く、よい状態にある。強く良い月は大衆からの人気を表す。またこの強く良い月の第5室在住は女性的な愛情、優しさ、慈悲心も意味する。
彼の政策や主張には平和を求めていることが伺える。

・イラク戦争には一貫して反対しており、開戦直前の2003年3月16日にブッシュ大統領がサダム・フセインに対して48時間以内のイラク撤退を求める最後通牒を出した際、シカゴでの反戦集会で聴衆に対して「まだ遅くない」と開戦反対を訴えた。就任後は段階的な撤退を目指すとしている。
・「国際的な核兵器禁止を目指す」とも発言しており、ロシアと協力し双方の弾道ミサイルを一触即発の状況から撤去し、兵器製造に転用可能な核分裂性物質の生産を世界的に禁止、更に米ロ間の中距離弾道ミサイル禁止を国際的に拡大することを目指すとしている。

このような性質は第6室に在住する金星に現れている。第6室在住の金星は平和主義を表している。また、この金星は第5室と第10室を支配するラージャ・ヨーガ・カラカで親密な友好状態で在住し、とてもよい状態にある。自己実現(第5室)が奉仕(第6室)活動の中にあり、天命・仕事(第10室)が奉仕(第6室)的な面があることを示していると思われる。また、実際に彼は人権派弁護士として活動し、貧困層救済の草の根社会活動をしていた。

環境政策
気候変動に関する協議に積極的に参加すると述べ、主要企業に二酸化炭素排出量の上限(排出枠)を設定する「キャップ・アンド・トレード」方式の排出量取引を開始し2020年までに温室効果ガスの排出量を大幅に削減する意向をカリフォルニア州の地球温暖化関連の会合に寄せたビデオ演説で表明した。

彼は地球環境への意識もそれなりに高く持っていると思われる。それは先に責任感の強さで述べたように地の星座の強さである。地の星座の強い人は環境意識も高いようだ。地は大地の地であり、地球と繋がりやすい気質を持っているからなのだろう。
第8室に火星とラーフが在住し、とても傷ついている。第8室は苦悩・制限・束縛・不安定・違法行為を表す。彼は基本的には全体的に人間的によい質を持っているがこの時期にはそれがやや不安定化することが考えられる。これから訪れる木星/火星期、木星/ラーフ期には大統領としてエネルギッシュに活動していくが社会的な評価を得がたく、彼にとってとても困難な時期になる可能性が考えられる。
第2室にケートゥが在住し、火星がアスペクトし、傷ついている。幼少期の環境の困難をあらわしている。また、言葉には攻撃的な面もある。ただ、月から2室に金星があることから、美しい言葉を語ることを示している。
木星と水星がタイトにアスペクトを組んでおり、とても知性的な人である。ラーシでは水星が仕事の7室、ナヴァムシャでは太陽から10室に在住し、高揚して、パドラ・ヨーガを構成している。ダシャムシャでも太陽から10室で定座に在住し、同様にパドラ・ヨーガを構成している。仕事において、水星の知性、コミュニケーション能力、弁舌能力が発揮されることがわかる。事実、彼は素晴らしい、弁舌能力を持っている。
■参考資料
Wikipedia バラク・オバマ
・オバマ大統領就任演説の全文
 市民の皆さん。
 わたしは今日、謙虚な思いで任務を前にし、皆さんが寄せてくれた信頼に感謝し、祖先たちが払った犠牲に心を留めながら、ここに立っている。ブッシュ大統領のわが国への奉仕、ならびに政権移行の間、示してくれた寛容さと協力に感謝する。
 これで、44人の米国人が大統領就任の宣誓を行った。その言葉は繁栄の高まりのとき、平和で静かなときに語られてきた。だが、多くの場合、誓いは立ち込める暗雲や猛威を振るう嵐の中で行われたのだ。こうしたとき、高位の者たちの技量や考え方だけに頼ることなく、われわれ人民が祖先の理想に忠実で建国の文言に従ってきたからこそ米国はこれまでやってこれた。
 われわれはそう歩んできたし、今の世代の米国人も同様でなければならない。
 われわれはいま危機の真っただ中にある。われわれの国は、果てしなく続く暴力と憎しみのネットワークと戦争状態にある。一部の強欲で無責任な人々のせいだけでなく、皆が困難な道を選び次の世代に備えることができなかった結果、経済はひどく脆弱になってしまった。家を失い、仕事は減り、商売は行き詰まった。医療費は高過ぎ、学校制度は明らかに失敗している。われわれのエネルギーの使い方が、敵を強化し、地球を脅かしているということが日々明らかになるばかりだ。
 これらはデータや統計で示すことができる危機の指標だ。測ることはできないが、同様に深刻なのは、自信喪失が全土に広がっており、米国の衰退は避けられず、次の世代は下を向いて生きなくてはならないという恐怖だ。
 今日、あなた方に言おう。われわれが直面する試練は本物だ。深刻で数多くあり、容易に短期間では解決できない。だが知ってほしい、アメリカよ。試練は克服できる。
 この日、恐怖より希望を、いさかいや不和より目的を共有することを選び、われわれは集まった。
 この日、われわれは、あまりにも長い間、この国の政治を窒息させてきた卑小な恨み言や偽りの約束、非難の応酬や使い古されたドグマ(教義)に終わりを告げる。
 われわれの国家はまだ若いが、聖書の言葉にあるように、子供じみたまねをやめるときが来た。不朽の精神を確認し、よりよい歴史を選択し、世代から世代へ受け継がれてきた大切な贈り物、崇高な理念を前進させるときが来たのだ。それは、すべての人民が平等で自由であり、最大限の幸福を追求する機会を与えられるという、神からの約束だ。
 われわれの国家の偉大さを確認するに際し、われわれは偉大さが決して与えられたものではなく、つかみ取らなくてはならないことを理解している。われわれの旅に近道はなく、途中で投げ出すことは決してなかった。その旅路は、労働より余暇を好み、富や名声による喜びのみを欲するような臆病者たちのためのものではなかった。むしろ、長く険しい道を、繁栄と自由に向けわれわれを導いてきたのは、リスクを恐れない者、自ら実行する者、物づくりをする者であった。一部は名をなした人々だが、より多くは勤勉で名もない人たちだった。
 われわれのために、彼らはわずかな所持品を荷物にまとめ、新たな暮らしを求めて海を渡った。
 われわれのために、彼らは劣悪な環境で懸命に働き、西部に移り住んだ。またむち打ちに耐え、硬い大地を耕した。
 われわれのために、彼らはコンコード(独立戦争の激戦地)やゲティズバーグ(南北戦争の激戦地)、ノルマンディー(第2次世界大戦で連合軍が上陸作戦を行った場所)、そしてケサン(ベトナム戦争の激戦地)のような場所で戦い、死んでいった。
 彼らは幾度となくもがき、犠牲となり、その手が擦りむけるまで働いた。われわれがより良い人生を送れるようにと。彼らの目には、米国は個人の志の集まりよりも大きく、出自や貧富、帰属のあらゆる違いを超えた偉大なものと映った。
 われわれは今日もこの旅を続けている。われわれは依然、地球上で最も繁栄した強い国家であり続けている。われわれの労働者はこの危機が始まったときと同様に生産的だ。われわれは変わらず独創的だ。われわれの商品やサービスは先週や先月、昨年と変わらず必要とされている。われわれの能力は衰えていない。しかしやり方を変えず限られた利益を守り、嫌な決断を先送りする時代は確実に過ぎ去った。今日から始めよう、われわれは元気を取り戻し、ほこりを払い、米国を再生させる仕事に取り掛からなければならないのだ。
 至る所にわれわれがなすべき仕事がある。(現在の)経済には大胆で迅速な行動が必要だ。われわれは新しい雇用を創出するだけでなく、新たな成長の基盤を築くために行動する。われわれは商業を潤してわれわれを結び付ける道路や橋、配電網やデジタル回線をつくる。われわれは科学をあるべき姿に回復させ、技術の驚異的な力を巧みに使って医療の質を向上させ、そのコストを削減する。われわれは太陽や風力、大地の恵みを利用して自動車を動かし、工場を稼働させる。そしてわれわれは新しい時代の要望に応じるため学校や、大学を改革する。われわれはこれらをすべて成し遂げることができるし、成し遂げるだろう。
 今、われわれの志の大きさに疑問を唱える人がいる。われわれのシステムが多くの大きな計画に耐えられないと指摘する人がいる。しかし彼らの記憶力は乏しい。彼らはこの国が成し遂げたものを忘れている。想像力が共通の目的と結び付き、必要性が勇気と交わったとき、自由な人間たちが成し遂げることができるものを忘れている。
 皮肉屋は、彼らの足元で地面が動いたことを理解していない。長い間、われわれを消耗させた陳腐な政治議論はもはや通用しない。今日問われているのは政府が大きいか小さいかではなく、政府が機能するかどうかだ。各家庭が適正な賃金の仕事を見つけ、費用負担ができる医療を手にして、尊厳ある退職後の生活を送る手助けを政府ができるかどうかだ。答えが「イエス」なら、われわれは前に進む。答えが「ノー」なら、その政策は終了する。国民のお金を管理するわれわれには説明責任がある。賢明に支出し、悪い慣習を改め、誰もが見守る中で仕事をしなければならない。そうすることでのみ、人々と政府の間に不可欠な信頼関係を再生することができるからだ。
 問うべきは、市場が良いか悪いかではない。富を生み出し自由を拡大する市場の力は無類のものだ。しかしこの危機により、監視しなければ市場は制御不能になることも分かった。富める者だけを優遇していては、国家の繁栄は長く続かないことが再確認された。われわれの経済が成功したのは、国内総生産(GDP)が大きいだけでなく、繁栄が広範囲に行き渡り、やる気のある者すべてに機会を与えることができたからだ。慈善ではなく、それがわれわれの公益に通じる最も確実な道だからだ。
 防衛に関しては、安全か理想かを選ばねばならないとの考えは誤りであり認めない。建国の父たちは、想像を超える危機に直面しながらも、法の支配と人権を保障する憲章を起草した。何世代にもわたって血が流される中で、この憲章は充実してきた。この理想の光は今も世界を照らしており、ご都合主義で手放すことはできない。大都市からわたしの父が生まれた小さな村まで、今日の日を見ている世界の人々や政府に告げたい。米国は、平和と尊厳を求めるすべての国、男性、女性、子供の友人だ。そして、いま一度先頭に立つ用意がある。
 先の世代は、ミサイルや戦車の力だけではなく、確固たる同盟関係と信念によってファシズムや共産主義と対決したことを思い起こしてほしい。先の世代は、われわれの力だけでは自分たちを守ることはできないし、その力で思うままに振る舞っていいわけではないことをわきまえていた。軍事力は思慮深く用いることでその力を増すことを踏まえ、われわれの安全は大義の正しさや謙虚さ、自制からもたらされることを知っていた。
 われわれは、この遺産を受け継ぐ。この信条にいま一度立ち返ることで、新たな脅威に立ち向かうことができる。この脅威はより大きな努力、国と国の間のより踏み込んだ協力と相互理解を必要とする。われわれは責任ある形でイラクをイラク人に委ね、アフガニスタンでは、平和を揺るぎなきものにしなくてはならない。古き友、かつての敵とともに核の脅威を減ずるための努力を重ね、地球温暖化を食い止める。われわれの生き方を疑わないし、それを守ることにためらいもない。そして、テロや罪のない人々をあやめることで目的を達しようとする者に断言しよう。今こそわれわれの精神はより堅固であり、打ち負かされることはない。勝つのはわれわれだ。
 われわれが多様な文化の寄せ集めであることは、弱さではなく力だ。われわれはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教、そして無宗教の人々の国である。この地球の至る所から集まったさまざまな言語や文化がわれわれを形づくっている。われわれは南北戦争や人種差別の苦渋を味わい、暗い歴史を超えてさらに強くなり、団結した。だからこそ、過去の憎しみは乗り越えられると信ぜずにはいられない。人種や民族間の隔たりが解消され世界が小さくなるにつれ、われわれに共通する人間性が現れる。米国は新たな平和の時代への先導役を務めねばならない。
 イスラム世界に対しては、相互の利益と尊重に基づき前進する新たな道を希求する。争いの種をまき、自らの社会の災難を西側社会のせいにする指導者たちよ。あなたたちが破壊するものではなく、築き上げるものによって人々の審判が下るのだ。腐敗と欺き、抑圧によって権力にしがみつく者たちは、歴史の流れに外れていると知れ。ただ拳を下ろすなら、われわれは手を差し伸べよう。
 貧しき国々の人々には、田畑が豊かに実るよう、清潔な水があふれるよう、共に働くと誓おう。飢えた体に滋養を注ぎ、やせ細った心を癒やすために。そして、われわれと同様、豊かさに恵まれた国々には、これ以上の無関心は許されないと訴えたい。結果を顧みずに世界の資源を浪費することは許されない。世界は変わった。われわれも共に変わらなければならない。
 われわれの前に延びる道を考えるとき、今このとき、はるか遠くの砂漠や山々をパトロールする勇敢な米国人を感謝の意を込めて思い起こす。時を超えてささやくアーリントンに眠る英雄たちのように、彼らはわれわれに語りかける。われわれは、彼らが自由の守り神というだけでなく、奉仕の精神を体現しているからこそ、自分自身よりも崇高な何かに積極的に意義を見いだそうとしているからこそ、敬意を表すのだ。新たな時代が形づくられようとしている今こそ、われわれはこの精神を心に宿さなくてはならない。
 政府の能力や義務はつまるところ、この国がよりどころとする米国民の信念と決意なのだ。堤防が決壊したときに見知らぬ人を受け入れる親切心、暗黒のときに友人が仕事を失うのを黙って見ているくらいなら自らの労働時間を削る労働者の無私の精神。煙に包まれた階段を突進する消防士の勇気、そして子どもを育てる親の意志。これらこそが、最後にわれわれの運命を決定付けるのだ。
 われわれの試練は新しいものかもしれない。それに立ち向かう手段も新しいものかもしれない。われわれの成功は、勤勉、誠実、勇気、フェアプレー、寛容、好奇心、忠誠心、そして愛国心といった価値観にかかっている。これらは古くからあるものだが、真理である。これらの価値観は歴史を通じて、進歩をもたらす静かな力であり続けてきた。必要なのは、こうした真理に立ち返ることだ。今われわれに求められているのは、新たな責任の時代だ。すなわち、米国民一人一人が、自分自身やわれわれの国家、世界に対して責務を負っていることを認識することだ。自分のすべてを困難な課題に注ぎ込むことほど充足感が得られ、われわれを特徴づけるものはないとの信念を持ち、いやいや受け入れるのでなく、むしろ喜んで受け入れる責務なのである。
 これが、市民であることの代償と約束だ。これが、われわれの自信の源なのだ。不確かな運命を自ら切り開くよう、神はわれわれに求めている。
 これが、われわれの自由と信念の意味だ。だから、あらゆる人種と信条の男女と子供たちが、この壮大なナショナルモールに祝福のために集まることができるのだ。だから、60年足らず前には食堂で給仕もしてもらえなかったであろう父を持つ一人の男が、最も神聖な宣誓をするため皆さんの前に立つことができるのだ。
 この日を記憶に刻もう。われわれが何者であり、どれほど遠く旅してきたのかを。米国が建国された年、厳寒の時期に、少数の愛国者の一団がいてつく川岸で、消えそうなたき火の傍らに寄り合った。首都は見捨てられ、敵は前進し、雪は血に染まった。独立革命の実現が不確かなときに、建国の父はこの言葉を読むよう命じた。
 「希望と美徳しか生き残れない酷寒の中で、共通の危機にさらされた都市と地方が共に立ち向かったと、未来の世界で語られるようにしよう」
 アメリカよ。共通の危機に直面した苦難の冬に、この不朽の言葉を記憶にとどめよう。希望と美徳を胸に抱き、いてつく流れに立ちはだかり、どんな嵐にも耐えてみせよう。子孫たちにこう言い伝えさせよう。試練にさらされたとき、われわれは旅を終えることを拒んだのだと。われわれは振り返ることも、たじろぐこともなかったのだと。そして地平線を見据え、神の慈悲を感じながら、自由という偉大な贈り物を抱き、未来の世代に無事に届けたのだと。(共同)

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