隈本有尚は、日本の教育者、天文学者、数学者、心理学者です。そして、近代になって日本にはじめて西洋占星術を日本に紹介した人物でもあります。彼はヨーロッパに官費留学して経済学を修め、その一方で、ドイツにおいてルドルフ・シュタイナーと出会い、シュタイナーの精神科学「人智学」を学び、イギリスにおいて「近代占星術の父」といわれるアラン・レオ(Alan Leo)やセファリアル(Sepharial)から占星術を学びました。
現代では「Astrology」を「占星術」と訳していますが、彼は「考星学」と訳して、日本に紹介しました。「考える星の学問」は占星術を誤解なく理解する相応しい訳語だと私は思います。今の訳語は「占い」という字が入ることで、本来の学問としての占星術が誤解して捉えられるもとになっているように思います。私が占星術をやっていると言うと、知らない人は霊能力者のように勘違いする人もいるからです。
隈本有尚は占星術により、政治、経済、社会などのあらゆる分野で数多くの予言を的中させ、山一證券の創業者小池国三は、有尚の占星術による景気予測によって巨万の利益を得たとされます。
彼は天文学者でもあり、数学者でもあったことから、科学としてのかなり緻密な考星学(占星術)をしていたことが想像されます。それでは実際の彼のチャートからその特徴が出ているかを見てみましょう。
科学的な思考に大切なのは土星と火星です。土星は地道にコツコツ考え、長期的な地道な研究をするための思考をもたらします。火星は論理的、合理的、科学的な思考能力を与えます。彼の実際のチャートでは思考を表す水星と土星が2度以内で極めて緊密な度数でコンジャンクションしています。更に高揚する火星がオーブ2度以内で正確な角度で8番目のアスペクトをしています。
土星と火星がかなり正確な度数でアスペクトすることから、極めて優れた科学的な思考能力の持ち主だったことが伺えます。このことから、緻密な科学的な研究とその予測によって、政治、経済、社会のあらゆる分野で予言を的中させることができたのでしょう。科学的な思考力に優れた典型的な天体配置をしています。
土星と火星は凶星なので水星を傷つけていると単に見ることもできます。しかし、実際にはそんな安直な解釈ではなく、それが何を意味しているかを正確に読み取ることが占星術の真の理解を深めることになります。
インド占星術は正に「考える星の学問」です。宇宙の星々が人間の運命にどのような影響を与えるのか理解するためものなのです。