インド占星術をしていると多くの場合、良いのか悪いのか、肯定的か否定的か、吉星か凶星かといった価値判断をしがちです。しかし、このような判断をしているとインド占星術を本当に有効に使うことはできないと私は考えています。
心理占星術の巨匠ノエル・ティル氏は星の配置にいかるなる価値判断も含まずに、緊張が次第に充足へと変わっていくプロセスと捉えるため、「成長のための緊張」という概念を提唱しています。
人間が成長するときには、必ず障害や困難、乗り越えなければならないものがあり、そのときには必ず緊張があります。緊張を喜んで受け入れ、上手に利用する人は、人間として、魂として、大きな成長があります。
凶星と呼ばれる惑星の中で火星と土星は緊張を伴うストレスをもたらします。しかし、それが同時に成長する力にもなるのです。そういった意味では人間の成長のために凶星は重要な働きがあります。
火星は怒りや攻撃性をもたらすだけでなく、集中力、行動力、勇気を与えます。土星は不安や恐怖心をもたらすだけではなく、忍耐強さ、現実的視点、自己反省力を与えます。
インド占星術は、自分が未熟な部分を知り、どの部分で成長していく余地があるのか、どの部分で成長を求められるのかを示しています。
インド占星術の結果をただ、良いのか悪いのかという判断をするのではなく、一見悪い配置と思われる配置にについて、自らの人生の中で、どのように成長のチャンスに変えていくのか、意味付けするのかがとても大切なのだと思います。
それをせず、良いか悪いかだけで判断していると、インド占星術は人生に絶望感を抱かせるものになってしまい、インド占星術に心を支配されることになってしまいます。インド占星術はあるがままの現実や人生を受け入れ、そして、様々な精神的な成長、浄化の努力をしていくことで生きることへの希望を見出し、人間として、魂を成長させるために使うものなのだと私は思っています。
私たち占星術家は、ホロスコープをリーディングするとき、一見マイナスに思える配置がどんな意味を持っているのか考える習慣を身につけることが大切です。そうしてこそ、インド占星術を学ぶ意味があり、人々に役立てるのだと私は思います。