マイケル・ジャクソン

マイケル・ジャクソン

村上幹智雄 -ミチユウ-
村上幹智雄 -ミチユウ-

マイケル・ジャクソン〜インド占星術家 杉村綾子のインド占星術研究レポート

マイケル・ジャクソンのホロスコープ

 

基本的な性質

陰陽のハウスの惑星の配置は、陽5、陰3。
活動性のハウスの惑星配置は、活動3、固着5、柔軟0。
4大エレメントは、火3、地1、風2、水2。

 

これらを、たとえば、アセンダント、1室支配星、太陽、月にウェイトを置いて、
それぞれ2点とカウントしても、全体の順位は変わらない。

 

これらを全体として眺めてみると、陽の活動的、積極的、自己表現、という性質が強い。
柔軟星座がなく、固着が多いので、ぶれることがなく、集中力や安定感、持続性がある。

 

火の情熱や創造のエネルギーが強く、他人に影響を与える人、正義感やインスピレーションの強い人。これらが、マイケルの基本的性質として読みとれる。

 

持って生まれたもの − 才能、性格、精神性

アセンダントはおうし座で、おうし座アセンダントは声が美しいといわれる。そこにかかっている土星は、「マイケルは、もともとの声が美しいだけでなく、その声を保つ努力を常々続けていたといわれている。」という行動に現われている。マイケルはふだんはシャイであったというのも、この土星の配置からくるものかもしれない。

 

普段はおとなしいが、ステージに上がると威厳のある姿に変化し、誰もが驚いた、といわれる。それは、このアセンダントと、しし座定座にいる太陽とのギャップであると思われる。

 

周りの人を楽しませるエンターテイメントの星座であるしし座に、人々の中心となる太陽が、定座という安定した状態で力を発揮している。そこに、5室支配の水星もコンジャンクションして、さらに創造性や芸術性を与えている。正々堂々とした、ある種カリスマ的なスピーチも、このしし座で太陽とコンジャンクションしている水星によるものと思われる。

 

また、この太陽と水星にも土星がアスペクトしているが、やはりこの土星が、もって生まれたスター性に安穏とするのではなく、さらに磨きをかける努力をさせたのではないか。

 

この土星は西の方角の強さを得ていて、9室、10室支配で仕事に関して強力な守護を与えてくれる星であることも重要である。この土星がアセンダントと太陽にアスペクトしていることが、マイケルが「完璧主義だった。」と言われるゆえんかもしれない。

 

1室の支配星は金星で、それ自体が、芸術、音楽を表し、芸能、自己表現などを表す3室にいる。まさにそう言った表現というものが、彼の本質だったのではないか。

 

しかし、この金星は、1室、6室を支配している。奉仕などの意味とともに、訴訟、トラブルを意味する6室を支配している1室支配星に、争いの惑星である火星がアスペクトをしていることで、彼の人生は順風満帆ではなく、度重なる訴訟、中傷に耐えながらのものになったとも読み取れる。

 

彼の本質、心を見てみると、本質を示す1室支配星は金星で、それ自体が愛と調和の星であり、慈愛に満ちたかに座に在住している。心を示す月は人類愛の視点でものを見る水がめ座。本当に心から世界の人々を愛し、平和を願っていた人なのだろうということが推察される。

 

 

補助的にナヴァムシャを確認してみると、やはりこちらでも、太陽が、かに座、出生図の1室支配星が水がめ座に在住しており、出生図と星座の特徴が重なる。(念のため、ナヴァムシャのアセンダント、ハウスは考慮に入れない。)

 

月のコンディションを見ると、ケマドルマで寂しさを示しているが、この月は満月であり、(敵対星座の6室に在住で8,11室支配で、機能的凶星となっているとはいえ)木星からのアスペクトを受けている。

 

これについても、参考にナヴァムシャを見ると、月は高揚の星座に在住し、木星からのみアスペクトされている。このことで、彼の心のコンディションがとてもよく、感性、情緒豊かで、高い精神性を持ち、母性的な慈悲の心に満ちた人であることが裏付けられる。

 

これらの精神性が、数々の訴訟、誹謗中傷に、心を痛めながらも、それらに屈することなく活動を続けられた基盤となっていたのではないかと考えられる。

 

また、その中で、正々堂々とした王たる威厳も持ち続けていられたのは、やはりしし座で太陽が強く、9室10室支配で仕事に幸運をもたらす着実な土星が、その太陽にアスペクトしていたからではないだろうか。

 

活動、できごと − 慈善事業、訴訟、離婚

マイケルは、数々の慈善事業、チャリティー活動を行い、その寄付総額は、わかっているだけでも4億ドルと言われている。アフリカ飢餓救済のための「We Are The World」は、あまりに有名だが、赤十字、ユネスコ、ネルソンマンデラこども基金、同時多発テロ被災者支援、などに協力し、1992年には、自ら「Heal The World基金」を設立する。

 

これらの活動のもととなる精神性は、先ほども述べたように、1室支配星である金星が、それ自体愛情の星であり、慈愛に満ちたかに座に在住していること、また、そこに慈善的で友愛精神を持つ天王星がいることなど、3室かに座のコンディションが一つの要因としてみてとれる。

 

そして、安定した心を示す満月の月が、10室の水がめ座にいる。みずがめ座は、人類全体を見渡す、自由平等博愛の精神を示す。この月は、木星のアスペクトで守られ、天命、使命を示す10室にいる。ある意味、こういった世界の恵まれない人々への活動は、マイケルにとって、天命、使命であったのではないかと推察される。

 

そんなマイケルにも、裁判、訴訟、ゴシップは絶えなかった。性的虐待疑惑、所属するソニーとの裁判、隠し子報道、尋常性白斑という病気に対する人種差別的報道、などなど。それでも、裁判はすべて、無罪判決となり、死後、病気についても事実であることが証明される。

 

これらを読み解いていくと、先述のようにマイケルの1室支配星が同時に訴訟を意味する6室も支配していることが目につく。そこに、スキャンダルの12室在住で、7室と12室を支配する火星がアスペクトし、人気を失うような攻撃がされたとよみとれる。

 

訴訟、争いごとを示す6室には、司法を意味する木星がいる。6室在住の木星は、争いが嫌いだが、争えば強く、裁判にも強い。正義、道徳、潔白のためには戦う星だからである。その木星は、8室と11室を支配している。自分ではいかんともしがたい困難を意味する8室であるが、11室は困難の末に願望を成就する意味があり、木星自体の生来的な吉意もあって、潔白であるという結果を得られたのかもしれない。

 

また、これらトラブルがあっても、それに負けずに社会的成功を続けることができた要因を考えるとき、やはり、マイケルの精神状態も、再度、いくつかの方向から考えてみたい。

 

心の状態に関しては、月のコンディションは上述の通り、かなり安定し、情緒豊かで精神性の高い人だったと考えられる。

 

さらに心の安定を見る4室は、太陽が定座で在住、5室支配の水星が在住し、9室支配の土星がアスペクトと、とても恵まれたコンディションである。

 

思考を示す5室は、思慮深い乙女座。5室支配星は理性的、論理的な水星であり、心の安定を示す4ハウスに在住、純粋で正々堂々とした太陽とコンジャンクションしている。この水星自身はトリコーナの5室を支配しており、同じくトリコーナの9室を支配する土星からのアスペクトを受けて守られている。

 

さらにいえば、この、9室支配で精神性の高さを示す土星が、水星のほかにも、太陽、アセンダントなど、主要な天体と感受点にアスペクトし、9室にアスペクトバックをして、9室のテーマである、高潔さ、倫理観、慈悲心などを強くしている。全体的に5室、9室の影響が強いこのコンディションから見て、ベースとして、きちんとした思考力を持ち、高い精神性と大きな幸運に恵まれている人であることがわかる。

 

ただ、不安要素として気になる点もいくつかある。前述の通り、月は満月であるが、よく見ると、土星からはオーブ2度で90度のアスペクト、金星からはオーブ1.45度で150度のアスペクトを受け、二重に傷ついている。そして思考を示す水星には、機能的には吉であるが、生来的には凶星である土星がアスペクトし、さらに逆行であるために、論理的思考に多少の混乱を与えることもあったかもしれない。また、5室在住のラーフによって、豊かな発想力には恵まれるが、度を超すと混乱することもあったかもしれない、などの点である。

 

マイケルの、時々人々を驚かせる突飛な行動や、スキャンダルを誘発するような言動などは、これらからきていたとも考えられる。本質的には崇高な精神性や、清らかな心を持っていたが、だからこそ、現実社会に適応するのが難しかったということであったのかもしれない。彼の作品の芸術性の高さと、スキャンダルの多かった現実とのギャップは、このあたりからくるものであったとも推察される。

 

とはいえ、これら、マイケルのベースとなる安定した精神の上に、深い愛に満ちた心と、まっとうな思考、高い道徳性、倫理観があったからこそ、数々の訴訟や中傷といった困難の中でも、世界中の人々に感動を与えるパフォーマンスを続け、愛され続けることができたのではないだろうか。

 

また、木星と火星が相互アスペクトしているグルマンガラヨーガに近い作用も、本人の努力によって、高い地位を獲得する強さを支えたのではないか。

 

離婚については、やはり、12室で定座となっている火星の影響が読みとれる。この火星は、パートナーを示す7室と、失うことを示す12室を支配している。

 

おひつじ座定座で安定した力を持った火星は木星からのアスペクトもあり、直感や好奇心、チャレンジ精神や激しいダンスなどで人々に影響を与える能力をもたらし、広い対人関係や人気を示す7室にアスペクトバックし、人気を得ることには貢献したと思われる。

 

しかし、パートナーに関しては、7室支配星が12室とからみ、結婚をしめす金星が争いを示す6室を支配して、さらに争いの火星からのアスペクトを受けている。又、月がケマドルマであり、心のさみしさを示していることなどとの相互的な影響の結果として、結婚生活の破たんへと作用したのではないかと読みとれる。

 

それでも、月、7室支配星には、木星がアスペクトし、7室には9室支配星が在住し、火星のアスペクトバックがあるなど、いい要素もあることが、また再婚相手に恵まれることにつながっているのかもしれない。

 

人生の流れ − 幼少期、芸能活動、死亡、そしてこれから

ダシャーで流れを見ていくと、生まれてから11歳までの幼少期は、8室11室支配で機能的凶星となり、凶ハウスである6室に在住している木星期となっている。さらに、凶星である火星のアスペクトも受けている。マイケルの生家は貧しく、父親は厳しくて肉体的、精神的なダメージを受けていたといわれる。

 

その木星期が終わり、土星期に移る直前(約4カ月前)の1969年10月に、ジャクソン5としてメジャーデビューしている。マイケルにとって土星は幸運の9室、仕事の10室を支配する最大吉星であり、ラージャヨーガカラカである。その後続く水星期も、2室5室支配のヨーガカラカであり、太陽とラージャヨーガを形成している。このふたつの幸運な惑星期が続いたことで、安定、継続して、社会的に大きな成功が得られたものと思われる。

 

死亡したのは、ラーフ―ケートゥ期であった。マハーダシャーのラーフは、それ自体がアンコンディショナル・マラカであるうえに、ディスポジターの水星が、殺人者を意味するマラカの2室を支配している。アンタルダシャーのケートゥのディスポジターは木星で、寿命と、突然の避けがたい出来事を示す8室を支配し、機能的に強い凶星となっている。このふたつの星のからみが、まさに「突然死」を示していると読みとれる。

 

死亡する約3年前からマハーダシャーがケートゥ期に入っている。それまで36年間続いた、ラージャヨーガを形成する惑星期、ラージャヨーガカラカ、ヨーガカラカである惑星期が終わり、ケートゥ期に入った2006年以降は、ベストアルバムを出すなどはしているが、目立った活動はしていない。長いラージャヨーガ期が終わり、神秘的なうお座の精神性の中で、さらに精神世界に集中していくケートゥの時期となり、意識がより内側に向かっていったのではないか。

 

ケートゥのディスポジターの木星は、やはり精神世界を示す8室を支配している。が、その中でも、2009年から、アンタルダシャーがラーフ期となり、意識が対外的なものに向かっていたのかもしれない。「This Is It」のツアーを開催すると発表するが、本人の死亡により、この公演は実際に幕をあけることはなかった。このラーフが、死亡という大きなできごとを誘因することになってしまったのかもしれない。

 

ダシャーの流れを死後もたどっていくと、2013年から、マハーダシャーは金星期に切り替わっている。マイケルの本質を現わす1室支配星の金星は、慈愛に満ちたかに座に在住しており、芸能を示す3室で音楽、芸術の金星が輝いていると考えると、この時期に、派手ではないが、彼の人生を貫き通した世界中の人々への惜しみない愛と、平和への祈りが、今後も、発表された芸術活動すべてを通して、その存在感を示し続けると読めないだろうか。

 

実際、死亡後も、直後だけではなく、2013年以降も、未発表曲を集めたアルバムや、シングルカット曲が発表されたり、他アーティストのアルバムにマイケルとの作品が収録されたりしている。

 

さらにいえば、2033年からは、太陽期に入る。太陽は、それ自身がラージャヨーガとダーナヨーガを両方形成しており、ラージャヨーガカラカの土星からアスペクトを受け、ヨーガカラカの水星とコンジャンクションしている。このとき、マイケルはまた世界にその真価を再評価される日が来るのかもしれない。

 

(執筆 杉村綾子、 監修 ミチユウ)