ニコラス・カルペパー肺病の事例

ニコラス・カルペパー肺病の事例

村上幹智雄 -ミチユウ-
村上幹智雄 -ミチユウ-

ニコラス・カルペパー肺病の事例

先日11月3日にセラピストのためのインド占星術講座の第1期が終わりました。

 

この8ヶ月間、医療占星術について徹底的に研究しました。ホロスコープ分析の数は毎回50以上、トータルで500以上の分析で、膨大なものになりました。インド占星術の古典や西洋占星術の本を鵜呑みにすることなく、実際のホロスコープにあたりてってきて期に検証しました。

 

西洋占星術の医療占星術の技法も研究し、インド占星術と統合し、一つの占星術体系として統合できるところが見えてきました。インド占星術単独、西洋占星術単独より飛躍的に分析の精度があがりました。

 

今回の8ヶ月にわたる研究で、今までインド占星術単独ではなぜかわからかったもののほとんどが解読できるようになりました。もちろんどこまでいっても100%とはありませんが。

 

その成果は、自分の言うのも何ですが、素晴らしいものです(私は土星の影響が強く、自信はあまりないほうです)。

 

今回は、その成果を事例で紹介したいと思います。

 

日本語でおそらく唯一専門的に書かれた西洋占星術の「メディカルアストロロジー入門」という翻訳本があります。

 

その中で薬草の研究者のニコラス・カルペパーの事例が紹介されています。

 

この本には次のように書かれています。

 

「ニコラス・カルペパーのチャートでは、土星が太陽と反対にあることに注目します。助けになるアスペクトはありません。カルペパーは薬草治療の活動は精力的であり、それが37歳という若さに彼の寿命を縮めたことにはついて疑いの余地はありません。彼は他の人々に貢献したことで疲れ果ててしまったのです。太陽は死と活力の浪費を表す第8室を支配しています。(中略)
 土星は月にハーフスクエア(45度のアスペクト)で薄暗い光を発しています。カルペパーが肺の病でなくなりますが、それは第6室/双子座の月の位置により適切に描写されます。」

 

この説明は西洋占星術のホロスコープですのでハウスの割り振りはこれから説明するインド占星術とは異なります。

 

 

さて、これをインド占星術と西洋占星術を統合した視点で見ると次のように分析することができます。

 

彼は太陽が減衰し、生命力が弱いことを示しています。ここに減衰の火星と減衰の土星がアスペクトをし、一生懸命頑張る、努力家の働き者であることを示しています。

 

ただ、太陽に対して土星が1度23分のオーブで正確に180度アスペクトを形成し、生命力をかなり低下させています。

 

インド占星術では通常、ハウス単位のアスペクトで見ますが、大病をする人は西洋占星術でみる正確な角度のアスペクトを見ることが大変重要です。緊密度が高いほど、重大な疾患をする可能性が高まります。

 

彼は肺の病でなくなっています。その原因は肺を意味する月と水星と3室の強い傷つきによるものです。月は土星からオーブ18分という45度の極めて緊密なアスペクトを受けています。

 

この45度という角度はマイナーアスペクトですがオーブを狭く取ると非常に強く作用し、最も致命的なダメージをもたらします。1?1度半以内のオーブでとるのが目安です。

 

また、ラーフからも30分という狭いオーブで105度のアスペクトを緊密に受けています。ラーフもその影響を受ける体の器官に混乱を与え弱らせます。特にラーフは難病と言われる根治が極めて困難な影響を与えます。

 

これらはインド占星術の土星の3番目のアスペクト、ラーフの5番目のアスペクトでも説明できますが、角度の正確さを見るとその深刻さが全く違うことがわかります。もし、この角度が緊密なものでなければ、そこまで深刻な病気になることはありません。

 

このため、肺を意味する月は致命的に傷ついています。

 

また、もう一つの肺を意味する水星はどうでしょうか。水星は12室に在住し傷ついています。一見するとそれだけの傷つきで大したことがないように思いますが、緊密なアスペクトを見ると水星も深い傷を負っているのがわかります。土星から1度以内の緊密な165度アスペクト、ラーフからの1度以内の緊密な105度アスペクトを受けています。

 

ここで解説している、この15度の倍数のアスペクトは西洋占星術でもマイナーアスペクトとしてほとんど扱うことはありません。しかし、医療占星術においては極めて重大な働きをします。心と身体の不調について見るときは西洋占星術のメジャーアスペクトに加え、15度、30度、45度、75度、105度、135度、150度、165度のアスペクトも必ずチェックします。

 

この角度をチェックするようになってから、深刻な心身の疾患の多くにこの角度が関わっていることがわかりました。これをチェックしなければ、インド占星術でも西洋占星術でも大した問題のない人が深刻な問題を抱えていることが読み取れるようになりました。

 

次に肺の疾患は3室と4室も関係します。このケースでは3室の傷つきがひどく出ています。3室にはラーフが在住し、火星から8番目のアスペクトを受けています。

 

そして、3室支配星の土星は減衰し、8室支配星の減衰する太陽から緊密なアスペクトを受けています。そして、ケートゥからの1度以内という、これもまた緊密な9番目(120度)のアスペクトを受けています。肺病に関係する3室もまたひどく傷ついています。

 

以上、肺を意味する月と水星、3室、3室支配星がひどく傷つき、深刻な肺病を抱えていたことがわかります。

 

そして、彼がなぜ、37歳という若さでなくなったのか。それも読み解いてみましょう。

 

彼の寿命を意味する8室には火星が在住し、8室支配星の月には、先程述べた土星とラーフが緊密なアスペクトを投げかけています。3つの凶星が強力な影響を与えていることから寿命が長くないことが推測されます。

 

そして、彼は19歳から35歳までは1室の定座に在住するマハー・ダシャー木星期でした。そのため精力的に活動できる時期であったと推測されます。しかし、次のダシャーは土星期です。

 

土星は彼にとって極めて悪いダシャーです。減衰し、ケートゥと8室支配の太陽の緊密なアスペクトを受けています。そして、この土星は肺を意味する月と水星に緊密なアスペクトを形成していました。そして、土星自身が3室支配星でひどく傷つき、減衰で弱っています。

 

そのため、この土星期に肺の病を患うことは占星術的に明らかです。そして、この土星はマラカの2室支配星でもあり、マラカの7室にアスペクトするため、彼に死をもたらす結果になってしまったのでしょう。

 

このように西洋占星術の正確な角度のアスペクト、15度の倍数系統のマイナーアスペクトを考慮することで、病気のより正確な分析ができ、そして、ヴィムショッタリー・ダシャーを使うことで発病時期を推測できるということが、8ヶ月にわたるセラピストのためのインド占星術講座のための研究成果でした。

 

占星術の世界は本当に奥深く、まだまだわからないことばかりです。今後も更に研究を進め、セラピスト、カウンセラー、アーユルヴェーダ、東洋医学、医療関係者に役立てる医療占星術を体系的に構築していきたいと思います。